以前、私は介護の現場で働いていました。
そして、現在は義母の介護のため仕事は退職しています。
介護の仕事と在宅介護、両方の体験から学んだことや感じたことを書こうと思います。
私は約10年、介護士として働いてきました。
以前勤務していたところは終身型の介護施設で、文字通り最期のときまで家族又は本人が望めば、入所していることができます。
よく、老人施設のことを昔は「姨捨山=おばすてやま」と呼んでいた人が多いようです。
実際、現場で働いていたときも「家族が私を邪魔に思ってここに捨てられた」と言っていた方もみえました。
しかし、施設に入所できたことのほうが幸せなのではないかと私は思っています。
もし、1人暮らしされている方であれば、急に体調が悪くなったときすぐに病院に行くことが困難です。
もし、年老いた夫婦二人の生活ならば老々介護になってしまってお互いに負担がかかります。
もし、お嫁さんや娘さんが一緒に暮らしていても、下の世話やお風呂など気持ち良くやって頂ける方ばかりではありません。
そう思うと介護施設は体調が悪くても職員や看護師が異変にすぐ気付き、病院との連携も早く適切な処置がおこなわれます。
生活全般のお世話もプロが行うことで気兼ねなく頼んで頂けることも多いのではないでしょうか。
特に下のお世話や入浴は一番デリケートな部分で、人によっては嫌がられる方もみえますが他人だからこそ出来ることもあります。
しかし入所されてみえる方からすると、昔から慣れ親しんだ所がいいんですよね。
自分の家へ帰りたいんです。
すぐに迎えにきてくれると信じて毎日のように今か今かと待ってみえる方もいました。
実際、家族にも色々な事情があり入所させたので、途中で自宅に帰られる方はほとんどいません。
最後の時を施設で迎えられる方がほとんどでした。
家族の方でも色々な方がみえ、週一で面会に来て下さる方。
入所以来、一度も面会に来られない方。
さまざまです。
しかし何が正解なのかは、ないのではないでしょうか。
色々な家族の形がありますからね。
実際、私も現在認知症の義母の介護をしていますが介護士として高齢者に関わるのと、在宅で私が診るのとでは全然違います。
正直、想像以上に在宅介護は大変でした。
何が大変なのか・・・
全てが一人で、私の変わりがいないからです。
施設では体調面は看護師、生活全般は介護スタッフ、食事は調理師、洗濯掃除は用務、書類関係は事務、夜中は夜勤スタッフ。
全てがチームで構成され、休みもあり交代も相談もできます。
しかし在宅介護は少しサービスの手を借りることが出来ても、ほんのひとときで、介護者の体調が悪くても自分がやらなければ変わりはいません。
私も義母を施設に預けることを考えました。
自分が潰れてしまう前に助けを求めようと思ったのです。
しかし実際は施設に入るにも多額なお金がかかり、施設に入りたくても空きの順番を待つ形になります。
私が言われたのは義母の入所の順番が回ってくるのは5年後ぐらいだろうと言われました。
施設に入所したいと思った時に入れるわけではないんです。
その体験を私は両方したことで、家族側の気持ちも入所される側の気持ちも今では良くわかります。
私は何度か最期の時に関わることがあったのですが、大抵の家族の方は「亡くなる前にもう少し会いにきてあげられれば良かった、ごめんね」と言っていかれます。
「でも施設に入れて幸せだったと思う」とも言って「ありがとうございました」とスタッフに頭を下げられます。
私たち介護士も後悔が残ることもあるんです。
急変にもっと早く気づいていれば!とか、もっと話相手になってあげられれば良かったのに!とか、色々な感情が溢れ出します。
そう思うと介護施設は姨捨山などではなく、介護する側もされる側も血の繋がりはなくても家族に近い存在になれているのではないでしょうか。
少なくとも、介護施設がこの世になければ本当に困る人たちで溢れてしまいます。
介護施設は家族にとってもなくてはならないものなのです。
義母は以前「介護施設に行くくらいなら下を噛んで死んでやる」と言っていました。
義母の中では、その位介護を受けることに抵抗があったのでしょう。
そして介護施設というものを真っ向から嫌っていたのでしょう。
自分はまだ年寄りではない!
自分のことは自分でできる!
ボケてはいない!
そんな風に思っていたのかもしれません。
しかし一度無理矢理、日帰り入浴に行かせたことがあるんです。
送迎車に乗る時も朝から「殺されるー、助けてー」と泣き叫んでいました。
しかし夕方帰ってきたときには満面の笑みでした。
「またお風呂行きましょうね」と介護士が声をかけると、義母は「毎日でもいいから迎えにきて」と言ったんです。
すごいですよね。
数時間前は泣き叫んでいたのに・・・
義母の笑顔を引き出してくれたのはスタッフの力だと思うんです。
介護施設を姨捨山というような悪いイメージを払拭し、ここは楽しい所なんだと思わせてくれたスタッフのみなさんには本当に感謝です。
義母は毎日のように「今日来るか?今日来るか?」と本当に楽しみにしています。